
『ファウンド』のネタバレあらすじと、感想・考察・評価を紹介します。
いじめられっ子のマーティの趣味は家族の秘密をコッソリのぞき見すること。
父親はエッチな雑誌を隠しているし、母親は昔の恋人からのラブレターをいまだに持っているのをマーティは知っている。
そして兄が殺人鬼で殺した相手の生首をクローゼットに隠していることも。
ある日マーティは兄のクローゼットに、自分のクラスメイトの少年の生首があるのを見つける…。
一緒に住んでいる兄が殺人鬼という設定や生首が印象的すぎて、グロ系ホラー映画だと思われがちですが、実は不器用な兄の弟への愛情をテーマにした『兄弟愛の物語』です。
ストーリーがラストへ進むに従って兄のマーティに対するいびつな愛情は観ていて切なくなりました。
彼もあんな父親の元に育てられていなければ、まともに真っすぐにマーティに愛情をそそげるいい兄になっていたでしょうね。
モンスターは生まれるものではなく、育てられるものだというのが本作を観ればよくわかります。

兄弟が金髪美少年なので、それ系のBL好きにの性癖にも刺さりまくりです。
『FOUND ファウンド』作品情報とキャスト
作品情報
「FOUND ファウンド」の作品情報は次の通りです。
- 作品名:FOUND ファウンド
- 公開:2012年
- 原題:Found
- 監督:スコット・シャーマー
- 脚本:トッド・リグニー、スコット・シャーマー
- 配給:AMGエンタテインメント
- 制作国:アメリカ
- 年齢制限:無し
- 時間:103分
キャスト
「FOUND ファウンド」の主要キャストは次の通りです。
- マーティ(ギャビン・ブラウン)…いじめられっ子。家族の秘密を覗き見るのが好き。
- スティーヴ(イーサン・フィルベック)…マーティの兄。
- 母親(フィリス・ムンロ)…マーティの母親。心配性な性格。
- 父親(ルーイ・ローレス)…マーティの父親。黒人を嫌っている。
- デイヴィッド(アレックス・コギン)…マーティの友人。

「ファウンド」ネタバレあらすじとラスト結末
1.マーティの趣味は家族の秘密をコッソリのぞき観ることの
マーティ(ギャビン・ブラウン)は知っている、兄のスティーヴ(イーサン・フィルベック)が人間の生首をクローゼットに隠していることを。
その生首は数日おきに入れ替わり、たいていは黒人の女性だ。マーティは度々彼の部屋に忍び込み、カバンに入れられたそれを鑑賞する。彼らの
生前に思いをはせたりもする。
そして兄にバレないよう慎重に元の場所に戻すのだ。
マーティはホラーが大好きな12歳の少年。黒人を嫌う父(ルーイ・ローレス)と、心配性の母(フィリス・ムンロ)、そして兄とマーティの4人家族だ。
内気なマーティは学校ではいじめられているが、デヴィッドという仲良しの友人がいて、二人で過激なコミックを描くことにハマっている。
母はそんなマーティを心配するが、父は「子供はホラーが好きなものさ」と軽くあしらいかばってくれる。そんな父も、兄に対してはいつも厳しく当たる。今日も顔を合わせるなりお決まりの口げんかが始まった。
両親には反発する兄だが、弟マーティにだけはやさしい。マーティが夜更かしをしていると、親にバレて怒られないよう扉の下から漏れる光を隠すようにとやさしく忠告してくれるのだ。
この家で秘密を隠しているのは兄だけではない。母は昔の恋人らしき男からのラブレター、父はポルノ雑誌を密かに保管している。
マーティはそんな家族の秘密を覗き見するのがやめられない。
2.お兄ちゃんは殺人鬼だった
マーティはいつものように兄の部屋に忍び込み、そこで見つけた見慣れないガスマスクをかぶっていると、入ってきた兄に見つかり激怒された。
しかし兄は、マーティが学校でマーカスという少年にいじめられていることを知ると、次は殴り返せと助言し、さっき怒鳴ったことも謝ってくれた。
マーティは自分にやさしくしてくれる兄が好きだが、別の顔を持ち合わせていることにずっと戸惑いを持ち続けている。
友人デヴィッド(アレックス・コギン)と一緒に映画を見ることになったマーティは、兄の部屋から「ヘッドレス」という映画をこっそり持ち出す。
マスクをかぶった男が女性をいたぶり殺し、挙句に切り落とした生首で自慰行為に及ぶ、猟奇殺人のホラー映画だ。
楽しんで見ているデヴィッドの横で、マーティはこの殺人鬼が兄とダブって震えが止まらない。なぜなら、このビデオケースに入っていた兄の手書きのメモを見たからだ。
一人目、二人目…と、順に殺される時間らしき数字が記されていた。兄はこのビデオを参考にしたのか?マーティは兄の殺人行為に初めて現実味を感じ、恐怖を覚え始める。
そんな浮かない顔のマーティを弱虫とからかうデヴィッド。彼をぎゃふんと言わせてやろうと、マーティは兄が隠し持つ生首をついに見せてしまうのだ。
いつものカバンに入っていたのは、マーティをいじめていた黒人の少年マーカスの生首だった。怖じ気づくデヴィッドにさらに追い打ちをかける。
兄は殺人鬼で、自分をいじめたからマーカスは殺されたのだ、と脅しでもかけるかのように。そしてマーティは悟った。たった今、唯一の友人を失ったということを。
自己嫌悪や兄への恐怖心からだんだんと追い詰められていくマーティ。
なぜ殺すのかとついに兄に問うてみた。兄は父親に習って黒人を害虫と罵り。モールや教会、政府も黒人が乗っ取るつもりだと主張した。
だから殺したのだと。しかし「お前は絶対に傷つけない」という言葉を聞いて安堵したマーティは、兄への敬意が芽生え始める。
3.徐々に暴力的になるマーティ
マーティの中で何かが変わり始める。黒人の神父を見下したり、いじめっ子を殴りつけたりと、これまでの弱気が嘘のようだ。
心配する神父や叱咤する両親の声は今の彼には届かない。だって、大人が解決してくれなかったいじめを、拳ひとつで終わらせたのは自分自身なのだから。
マーティはそんな自分が誇らしかった。「お兄ちゃんにはまだかなわないけど…」
友人を殴ったマーティに激昂し殴りつける父。しかし父が心配するのはマーティ自身のことではなく、殴った友人家族に訴えられることのようだ。
マーティは自問する。モンスターはいったい誰なのだと。父?兄?それとも僕?
ラスト結末.兄のいびつな愛情と崩壊する家族
その夜、兄はいつもと様子が違っていた。両親を殺すつもりなのだと察したマーティは殺さないでと必死に懇願する。
しかしそんな言葉には耳も貸さず、父にシャベルで一撃を食らわせた兄は、さらに逃げる母を追いかけ襲いかかる。
マーティの「好きだった兄」はその瞬間に消えた。
制止に入るマーティをベッドの上に縛りつけ、さらに両親への暴行は続く。いつの間にかガスマスクをつけ全裸になった兄は、鉈(なた)を手にただひたすら二人をいたぶる。
母の泣き叫ぶ声と、父のどなり声だけが響き渡る中、マーティはただ泣くことしかできない。
そして二人の声は聞こえなくなった。
全身に血を受けた兄が戻ってきてマーティに語りかける。「いずれ感謝するはずだ。これで何もかも大丈夫になる」と。
泣きじゃくるマーティを見て、自分か泣かせたのではと苦悶し、弟を傷つけなことに固執する異様な愛情を見せるのだった。
そして朝。
すべてを終えた兄は血に塗られた全裸姿のまま、ふらふらと外に出る。あらゆる感情を失った抜け殻のようだ。
一方マーティはまだ縛り付けられたまま、誰かが見つけてくれるのをただひたすら待っていた。両親の生首と切り刻まれた肉片に埋もれたベッドの上で。
映画「ファウンド」感想と評価
過激な描写に目が行きがちですが、マーティの少しずつ変化する心の動きや葛藤を巧みに捉え、更には人種差別がもたらす危険性を訴えた、非常に優れた映画です。
「モンスターは誰なのか」とマーティが自問するシーンは特に印象的でした。
兄をモンスターにしたのは身勝手な父で、一方、兄に憧れを抱き始めている自分もすでにモンスターなのか、とそんな想いを巡らせたのではないでしょうか。暴力的になったマーティは、自分の危うさをちゃんと認識していたはずです。
兄もかつては父に憧れ、認められたいと思っていたのかも知れませんね。
父の差別意識によって兄は「黒人」という明確な標的を創り出してしまいました。しかし子どもの本質に目を向けない父への欲求不満から、憎悪と愛情にまみれたモンスターとなってしまったと推測できます。
最後に兄は両親を殺したことを「いずれ感謝するはず」とマーティに伝えますが、そこにはどんな真意があったのでしょう?
僕は「もうあのクソ親のせいでお前はモンスターにならなくて済むのだ」という言葉から、「お前はまだ引き返せる」という兄からのメッセージだったんだと思います。
なんとしてもマーティを救いたかった兄の不器用な愛情だったとすると、なんとも切ない物語です。

なお本作は「Netflix(ネットフリックス)」で配信中。
「Netflix」のレビュー・評価や他のVODサービスとの比較については次の記事をご参照ください。


