
『太陽を盗んだ男』のネタバレあらすじと、感想・考察・評価を紹介します。
『太陽を盗んだ男』作品情報とキャスト
作品情報
「太陽を盗んだ男」の作品情報は次の通りです。
- 作品名:太陽を盗んだ男
- 制作:1979年
- 原案:レナード・シュレイダー
- 監督:長谷川和彦
- 脚本:レナード・シュレイダー、長谷川和彦
- 配給:東宝
- 制作国:日本
- 年齢制限:無し
- 時間:147分
キャスト
「太陽を盗んだ男」の主要キャストは次の通りです。
- 城戸誠(沢田研二)
- 山下満州男警部(菅原文太)
- 沢井零子(池上季実子)
- バスジャック犯(伊藤雄之助)
「太陽を盗んだ男」のネタバレあらすじとラスト結末
1.ごく普通の中学校の教師・城戸誠
主人公・城戸誠(沢田研二)は中学校の理科の教師である。いつもガムを噛んでいることから生徒からは「フーセンガム」というあだ名を付けられ、学校にも平気で遅刻する教師だ。
そんなある日、城戸の乗った遠足のバスがハイジャックされる。犯人は老人(伊藤雄之助)であり、要求は天皇陛下に会わせろという内容だった。
バスは皇居前まで行き、最終的には山下警部の活躍によって、事件は解決した。城戸も、この事件の解決に協力した。
しかしその後城戸は原子力発電所に不法侵入し、プルトニウムを盗んだ。城戸は自宅で原子爆弾を作るつもりなのだ。
また学校の授業でも、ほとんどの生徒が望んでいない「原子爆弾の作り方」を教える。城戸は昼間は学校に行き授業で理科を教えながら、それ以外の時間は爆弾作りに励んだ。
アパートでは着々と原子爆弾が組み立てられていくが、途中の工程でハプニングが発生し、被曝してしまう。
原子爆弾はダミーと本物の2種類が作られた。城戸は妊婦に変装し、国会議事堂に潜入する。お腹の中には、ダミーの原子爆弾を隠し持っていた。
女子トイレにダミーの原爆を置いた城戸は、公衆電話から警察庁に電話をかけ、ダミーの原爆を置いた位置を知らせ脅迫する。また、今後は山下警部(菅原文太)としか話をしないと言った。
爆弾が分解されると、中央には梅干しが入っていた。しかし構造は原子爆弾とそっくりであり、これは犯人が原爆を持っていることを意味していた。指名を受けた山下は困惑する。
2.ラジオDJ沢井と城戸との出会い
警視庁の電話が鳴り、山下が電話を取る。城戸から山下への要求は、プロ野球のナイターの試合を最後まで見せろという内容であった。
その晩のナイターは、試合終了まで放送される。ホテルのテレビで野球中継を見ていた城戸は、これを狂喜した。
城戸は再度山下に電話をかけ、自分の名前は「9番」だと告げる。核保有国が8ヶ国あり、自分は9番目だと言うのだ。
次なる要求を決めかねた城戸は、沢井零子(池上季実子)がDJをするラジオ番組に電話をかけ、リスナーから要求を募集する。
沢井は原爆を持っているという城戸の話をまともに信じておらず、「ちょっと面白いじゃない」と茶化した。城戸は、ここでも自分の名を9番と名乗る。多くのリスナーから投稿があり、その中で城戸は沢井の思い付いた「ローリングストーンズの日本公演」を採用した。
山下は放送終了後に沢井らを訪ね、軽はずみな言動を控えて欲しいと言い、名刺を渡した。
後日ローリングストーンズの来日公演が決定する。城戸は再び沢井のラジオ番組に電話をかけるが、そのラジオの収録は屋外で行われており、すぐ近くの公衆電話から電話した城戸は沢井に感づかれてしまう。
沢井は公開収録中にDJを放棄し、城戸のあとを尾行した。沢井は徐々に城戸に惹かれていき、警察の取り調べを受けても彼をかばうようになる。
3.現金5億円をばら撒けと城戸が要求
城戸の次なる要求は、現金5億円を用意しろというものだった。次の日曜日警察側は言われた通り5億円用意し、目印の黒い旗を立てた。
また山下には、指定した喫茶店で待機するようにと言う。城戸はデパートの屋上に上がり、そこの公衆電話から山下へ電話をかけた。
しかしあらかじめ山下が逆探知を仕掛けておいたため、城戸の居場所が東急デパート屋上と判明してしまう。
城戸は慌ててその場を立ち去り、下のフロアへ向かった。トイレに入った城戸は、鏡を見て驚く。
歯茎からは血が出ており、これが被曝によるものであることは明らかだった。ショックを受けた城戸は、トイレの個室で拳銃を取出し自殺を考えるが躊躇した。
デパートの出入り口は警察が閉鎖しており、お客がパニックに陥っている。爆弾は山下らが待機している喫茶店にあったが10分後には爆発するという状況だった。
城戸は、デパートの屋上から5億円ばら撒けば、解除の方法を教えると言う。山下はこの条件を聞き入れ、即刻現金をばら撒いた。
下にいる人達は大喜びで、現金を拾う。デパートの入り口の封鎖も解け、城戸はその人ごみに紛れて逃亡する。
城戸はあと15秒で爆発するという時に山下に電話をかけ、「赤と黒のコードのどちらを切っても良い」と解除の仕方を教える。自分の作った原爆が警察に運ばれるのを見届ける城戸に、沢井が声を掛けた。
ラスト結末.原爆を取り戻した城戸
深夜城戸は再度警察に大胆な方法で侵入し、爆弾を取り戻す。爆弾のありかを教えたのは沢井だった。
沢井は爆弾を取り戻した城戸を車で迎え、運転は城戸に代わった。すぐに山下が追いかけてきて、カーチェイスとなる。
しかし何とか逃げ切った2人を、ヘリにぶら下がった山下が銃撃する。これにより車が転落し、沢井が亡くなった。死に際に沢井は「長生きしてね」と言う。城戸はその場を走り去った。
ローリングストーンズの公演当日、山下は武道館で張り込みをしていた。そこへ城戸が現れる。
城戸を例のバスジャックの時の高校教師だと認識している山下は、気安く会話をする。しかし銃を突き付けられ、30分後に原爆が爆発すると脅迫された時、この男が犯人であったとはじめて気づくのだ。
城戸は山下をビルの屋上へ誘導し、山下に自分で手錠を掛けるよう命令した。その後もみ合いになった2人は、ビルの屋上から落ちる。山下は死亡し、城戸は助かった。
城戸はタイムリミットの迫った原爆を抱え、通りを歩く。
「太陽を盗んだ男」の感想・考察・評価
現在でも多くの映画ファンから高く評価されている『太陽を盗んだ男』
自宅で原爆を作った男が政府を脅かすという内容のストーリーはあまりにも刺激的であり、同時にアンモラルでもあります。
原爆を製造する過程をここまで丹念に描くなんて、ブッ飛んでいるているとしか言いようがありません。しかし映画の良し悪しは、時として理屈で説明できないこともあるのです。
そんな幻の問題作の監督を務めたのは、長谷川和彦監督。
長谷川さんはこれまでにたった2本しか映画を撮っていませんが、彼の作品を絶賛する人は後を絶ちません。
また本作では皇居前広場、国会議事堂前など複数箇所のロケがゲリラ撮影で行われており、特に首都高でのカーチェイスシーンはスタイリッシュで見応えがあります。
現在の日本では、撮影不可能なシーンのオンパレードです。
そして主人公の無気力な中学教師の犯人を沢田研二が好演しています。いざ原爆を作ったのは良いが実際には「プロ野球の中継放送を最後まで流して欲しい」など、拍子抜けするような要求しかできない主人公は、どこか滑稽です。
またシラケ世代独特のムードを持つこの男は、独身で身寄りもなく、理解しあえる恋人や友人もいません。そんな城戸は、山下や沢井にシンパシーを感じはじめるのです。
公開当時トップアイドルであった沢田の演じる城戸は、危険人物でありながらもセクシーで、感情移入しやすいキャラクター。
特に城戸が被曝したことに気付くシーンはもの悲しく、愚かな自分を責めている様にも見えました。
原爆が完成した時に狂喜しボブ・マーリーのレゲエに合わせて歌うパフォーマンスからは、沢田のカリスマ性が覗えると同時に、映像表現でしか受け取ることのできない何かを味わうことができます。
ストーリーはかなりめちゃくちゃなのですが、それすらも凌駕するパワーを感じる作品です。

なお本作は「Netflix(ネットフリックス)」で配信中。
「Netflix」のレビュー・評価や他のVODサービスとの比較については次の記事をご参照ください。


