
アルゼンチン映画『黒い雪』のネタバレあらすじと、感想・考察・評価を紹介します。
『黒い雪』作品情報とキャスト
作品情報
「黒い雪」の作品情報は次の通りです。
- 作品名:黒い雪
- 制作:2017年
- 原題:Nieve negra
- 監督:マルティン・オダラ
- 脚本:レオネル・ダゴスティーノ、マルティン・オダラ
- 配信:Netflix
- 制作国:スペインアルゼンチン
- 年齢制限:無し
- 時間:90分
キャスト
「黒い雪」の主要キャストは次の通りです。
- ライア・コスタ
- リチャード・ダーリン
- ドロレス・フォンシ
- ミケル・イグレシアス
- フェデリコ・ルッピ
- ビエル・モントーロ
- リアー・オプリー
- レオナルド・スバラーリャ
「黒い雪」ネタバレあらすじとラスト結末
1.妻を連れ故郷へ
マルコスは愛妻ラウラを連れ、人里離れた雪山へ向かう。マルコスの父が亡くなったのだ。
ラウラは妊娠していて、僅かにお腹が膨らんでいる。夫妻がマルコスと妹サブリナの持ち家に着くと、弁護士のセピアから電話が入った。セピアは、マルコスの父の親友でもある。
セピアは、マルコスら兄弟の土地を売却するように勧める。この一族が持っている土地を、カナダ人が欲しがっており、売却すれば全部で900万ドルもの大金が入るのだ。
しかし土地の売却には、マルコスの兄サルバドルの同意が必要である。セピアはマルコスに、兄を説得しろと言った。
マルコスは子供時代の家族写真を妻ラウラに見せる。父を囲んで笑顔の4人の子供達。
マルコスと兄のサルバドル、妹のサブリナ、そして幼い弟ホアンだ。ラウラはホアンを見て、可愛いと褒める。写真の中に母親の姿はなかった。
その晩マルコスは、雪山の中で兄弟と狩りをする夢を見てうなされる。
翌日マルコスは心療内科で暴れるサブリナの姿を見て、ショックを受けた。家が荒らされたように散らかっていたのは、そのせいだったのだ。
一方ラウラは、マルコスの留守中にサブリナの部屋を物色し、彼女の描いた絵を眺める。その際、マルコスの弟ホアンが雪崩で死亡したという新聞の記事の切り抜きを見つけた。
ラウラは昨日の晩ホアンについて触れたはずなのに、その話が出なかったのは奇妙だと感じる。
マルコスに届いた父親からの遺言には「納骨の場所は分かっているな」とだけあった。
2.気難しい兄と家族の暗い過去
マルコス夫妻は兄の家を訪問するが、自分達が歓迎されていない空気を瞬時に読み取った。サルバドルは偏屈な性格の上、今回の土地売却の件にも大反対である。
この家はサルバドルのものだが、子供の頃に家族で住んでいた家でもある。マルコスは家に入った途端、サルバドルが2階で父親から罰を受けていたのを思い出し憂鬱な気分になった。
ラウラは不穏な空気を瞬時に感じ取り、この兄弟には何か確執があると理解する。
マルコスはサルバドルに、ホアンの墓の隣に納骨するよう父から遺言があったと伝えた。
ホアンの墓の場所を覚えているのは、サルバドルだけだ。サルバドルは「忘れたのか」と半ば呆れ半分にマルコスを非難した。
翌日サルバドルは、マルコスに狩猟のための銃を差し出す。サルバドルは、マルコスが狩りをしたがらないのを知っていて、わざと嫌がらせをしているようだ。
夕食時マルコスは、サルバドルに土地売却の話を持ちかける。サルバドルは、もしも土地を売却したらこの土地にあるホアンの墓はどうなるのかと問いつめた。やはり、サルバドルに土地を売る気は全く無いようだ。
また妹のサブリナの医療費が必要だと主張するマルコスに、サルバドルは冷たく「お前の妹だろ」と答える。
ラウラは、この家族の中でサルバドルが孤立していることを感じ取った。サルバドルはラウラが妊娠していることを聞いても、少しも喜んだ素振りを見せない。
一方ラウラは、マルコスがなぜ狩りを拒んだのか?と疑問に思いそれを彼に問う。
マルコスは、あの銃でホアンが死んだからだと答えた。しかしマルコスもサルバドルもホアンの死について、ラウラに詳しい説明をしようとはない。
かろうじて、セピアがホアンの死を雪崩の事故として解決した事だけは分かった。
3.ホアンの墓
兄弟間に漂うギクシャクした空気から、おそらくサルバドルがホアンを誤射したのだとラウラは受け止める。
次の日3人はホアンの墓へと向った。しかし、その場所に着いてもサルバドルは車から降りようとしない。
マルコスはホアンが死んだ時に、棺を埋める穴をサルバドルが1人で掘ったことを思い出した。ホアンを誤射したサルバドルを、父親が罰したのであろう。他の兄弟は、黙ってその行為を見守っていた。
今はサルバドルがマルコスに穴を掘らせ、少し離れたところからそれをじっと見ている。それはまるで自分が昔受けた仕打ちの復讐であった。マルコスは、何もしようとしないサルバドルに苛立ちを隠せない。
その後ホアンの墓から戻ったマルコスは、すぐに帰ると言い出した。帰り際マルコスはサルバドルに「父の仕打ちは酷かった」と同情するように言う。
またあれは事故だから気にすることはないと慰めた。
辛い過去に触れられ激昂したサルバドルは、表情を変えマルコスに殴りかかり、今すぐ帰れと脅した。
カッとなったマルコスは助手席に妹サブリナを乗せ退散するが、大雪の中スピードを出し過ぎたため、すぐに事故を起こしてしまう。
車はピクリとも動かない。妊娠しているラウラを気遣うのであれば、サルバドルの家まで歩いて戻るのが妥当な判断だ。しかしマルコスは、それだけはしたくないといった素振りでラウラの意見を無視する。
ラウラはお腹の中の赤ん坊を守るためサルバドルの家まで戻り、離れの小屋に避難した。そこで、マルコスも仕方なくラウラについていく。
マルコスが戻ってきたことを知ったサルバドルは、マルコスに銃を向け数回空撃ちした。これは脅しでマルコスを追い払うためであったが、小屋からそれを見ていたラウラがサルバドルを射殺してしまう。
ラウラは「ホアンを撃ったサルバドルなら、マルコスも殺されかねないと思ったからだ」と弁解した。マルコスは「兄さんは僕を撃たない」と言って涙を流す。
ラスト結末.真実を知ったラウラ
翌朝、弁護士であるセピアがサルバドル宅に駆けつけた。サルバドルの死を確認したセピアは、「何て家族なんだ!」と嘆く。
またセピアは妊婦を刑務所に送るわけにいかないと言い、マルコスが兄を射殺したことにすると提案した。これにマルコスも同意し、兄に銃を向けられたため正当防衛で撃ったのだと主張する。マルコスは、ひとまず警察に連行された。
その後サルバドル宅にたった1人残されたラウラは、赤いノートが隠されているのを見つける。それはまだ10代の頃のサブリナのノートで、これによりマルコスとサブリナが愛し合っていたことが判明した。
ノートには「ホアンに見られた、兄さんと父に告げ口される」と言う内容のメモ書きが挟まれている。
これは若かりし頃のマルコスがサブリナ宛てに送ったメッセージだ。マルコスとサブリナは兄弟同士で性行為に及んだ現場を、幼いホアンに見られたのだった。
その後マルコスは狩猟中、ホアンを口封じのため射殺した。
ラウラは衝撃的な事実を知り、1人で涙を流す。その後ラウラはメモ書きの1部を破ることで「ホアンに見られた、父に告げ口される」とし、マルコスがホアンを殺害したという証拠を隠蔽した。
マルコスは無事帰宅し、全てに片が付いたと言う。
ラウラは真顔でマルコスにそのメモ書きを見せた上で、「(あなたがホアンを殺害したと)知っているの。何もかも忘れましょう」と伝えた。
ラウラはホアン殺しの犯人がマルコスであると知っていながら、そのことには何も触れない。
ラウラは起こったこと全てを理解し、その上で夫と生きていく決意をしたのだ。沈黙したままじっと見つめるマルコスを、ラウラがそっと抱きしめた。
「黒い雪」感想・評価・考察【ホアン殺害犯がわかった時の衝撃】
本作品はスペインとアルゼンチンの合作映画で、マルティン・オダラ監督によって制作されました。
この映画は知名度こそ低いものの、鑑賞者やコアな映画ファンからは多くの好意的な感想や意見が寄せられている傑作。
劇中ではセリフで説明されることが極めて少なく、回想シーンや人物らの微かな表情から過去に起こったことを推理するしかありません。
つまり「誰がホアンを殺したのか?」を自然と鑑賞者に考察させるつくりなのです。これが素晴らしい。
またマルコスがホアンの死について一切口にしないのは兄への気遣いだと思わせておいて、実は本人が犯人だったというからくりも衝撃的でした。
物静かでありながらもミステリー作品として秀逸で、説得力ある映画です。
嘘はついていないが、真実を話さない人々。質問してはいけないという演者たちの雰囲気に圧倒され、鑑賞後もこの沈黙を破るのがはばかられるほどの迫力でした。
「Netflix」で配信中なので、ミステリー好きには観てもらいたい隠れた名作です。