
映画『キタキタ(Kita Kita)』のネタバレあらすじと、感想・考察・評価を紹介します。
『キタキタ』作品情報とキャスト
作品情報
「キタキタ」の作品情報は次の通りです。
- 作品名:キタキタ
- 制作:2017年
- 原題:Kita Kita
- 監督:シグリッド・アンドレア・P・ベルナルド
- 脚本:シグリッド・アンドレア・P・ベルナルド
- 配信:Netflix
- 制作国:フィリピン
- 年齢制限:無し
- 時間:95分
キャスト
「キタキタ」の主要キャストは次の通りです。
- アレッサンドラ・デ・ロッシ
- エンポイ・マルケス
「キタキタ」ネタバレあらすじとラスト結末
1.婚約者の浮気
札幌に住むフィリピン人レアは、ツアーガイドの仕事をしていた。恋人ノブとは2年前から婚約しているが、最近はなかなか連絡が取れない。
ある日、レアは同じフィリピン人女性のアイコに声を掛けるが、彼女は以前よりもそっけなかった。
その後レアは、見知らぬおばさんからメモを受け取る。そこには「ビアガーデンに夜8時で大丈夫」と書いてあった。
てっきりノブからの伝言だと思ったレアは、夜8時にビアガーデンに行く。しかしそこでレアは、ノブがアイコと浮気しているのを目撃してしまった。
突如レアが目の前に立ちはだかり姿を現わしたため、2人は凍り付く。レアは怒りをグッとこらえ、10秒数えた。カッとなり暴言を吐かないためだ。
またレアは1~10の数字にまつわる、ノブとの恋愛エピソードを思い出した。ノブの体に6つのほくろがあることや、初めてノブと出会った日7杯のお酒を飲んだことなどだ。
10回電話してもノブが電話に出なかった晩は、飲み屋に居合わせたバナナの着ぐるみを着た男が、励ましてくれたこともあった。
無言でその場を立ち去ったレアをノブが追って来るが、レアは彼に婚約指輪を投げつける。その後レアは、通りを歩いている途中に意識を失い倒れた。
2.ストレスによる一過性盲目で視力を失うレア
その後、レアはストレスにより視力を失った。レアの姉は彼女の食事などを冷蔵庫に用意し、留守電にはメッセージを入れる。
レアは一軒家に1人で住んでおり、家の前には小さな庭があった。白杖を片手におそるおそる庭に出て、椅子に腰かけるレア。そこに、トニョというフィリピン人男性が弁当を持って現れた。
トニョは日本語が上手く話せずタガログ語でレアに話しかけるが、レアはほとんど何も話さない。失恋のショックを受けた上視力まで失ったレアは、誰かと話をする気力もなかった。トニョは、自分は最近向かいの家に引っ越してきた者だと言う。
レアはトニョの話を最後まで聞かず、弁当も受け取らなかった。このような日が何日も続いたが、レアは次第にトニョに気を許していった。
2人はフィリピン料理のシニガンスープやアドボ、ルンピアを一緒に食べる。その後トニョの提案により、小樽の観光地をあちこちと回った。トニョは目が見えないレアのガイドになると言う。
冗談を言い合いながら2人で観光する内に、レアに笑顔が戻った。
それ以降もトニョとレアはラベンダー畑に行ったり、足湯を楽しんだりする。レアの病気はストレスからくる一過性盲で、発症してから4週間が経っていた。近い内に治らないと、一生視覚に障害を持ったまま、過ごすことになるのだと話す。
またレアは、だんだんトニョの顔が見てみたいと思うようになっていた。トニョは、キャベツを食べると幸せになれると言う。
3.視力が回復、しかしトニョが交通事故で…
レアは、頻繁にトニョの家を訪ねるようになった。2人はダンスをしたり、ウェディングドレスを着て結婚式の真似事をしたりもする。
トニョは、レアにだるま人形をプレゼントした。願いを込めてだるまの目を黒く塗りつぶすと、望みが叶うと言うのだ。レアは再び目が見えるようになることを願い、だるまの目を黒く塗った。
その後もトニョと観光を続けるレアは、「トニョのことを以前から知っている気がする」と言った。2人はもはや恋人同士のようである。ある時トニョは街頭でレアを待たせ、贈り物を買いに行った。
1人になったレアの視界に、街の灯りや見慣れた光景が蘇る。レアは再び、目が見えるようになったのだ。
向うから歩いてくるトニョに手を振るレア。これを見たトニョは、レアが視力を取り戻したのだと分かり微笑む。
その後トニョは、嬉しそうにプレゼントのクマのぬいぐるみを振って見せた。しかしその直後、トニョの横から車が飛び出してきて、これにぶつかったトニョは死んでしまう。
レアは、呆然として言葉も出なかった。心配した姉からは、留守電に励ましのメッセージが入る。レアはトニョから合鍵を受け取っていたことを思い出し、向かいの彼の家を訪ねた。
部屋には、トニョがレアのために願いを込めて折った千羽鶴がたくさん吊るしてある。
ラスト結末.トニョの過去をはじめて知るレア
実はトニョはレアの視覚が戻った時に渡そうと思い、手紙を書いていた。この手紙によると、トニョは以前東京に住んでいたが、女の子に振られたことをきっかけに札幌に引っ越してきたのだと分かる。
トニョは、サッポロビールが大好きだった。札幌に移り住んでからも、ビールを飲みまくるトニョ。記念に自撮りをした際に、後ろにたまたま写っていたのがレアだった。まだ、ノブと付き合っていた頃のレアである。
トニョはレアの後をつけ、レアの家を把握した。一方レアは自分の家の近所で、ホームレスとなり酒に溺れるトニョに、明るい言葉をかける。またレアはキャベツ料理の弁当を、トニョに届けたり、彼のために毛布を用意したりもした。
レアの好意や優しさに触れ感謝したトニョは、きちんと働き彼女の向かいの家を借りることにする。小奇麗になったトニョは、その後もレアをつけ回した。
トニョはレアに恋人がいることも、彼女がツアーガイドの仕事をしていることも全て知っていたのだ。
また彼の部屋にバナナの着ぐるみが置いてあることから、彼があの時飲み屋にいたバナナなのだと知る。ハート型の着ぐるみを着てコスプレをしたレアに合わせ、自分もコスプレをし彼女を元気付けたのだ。
レアはあらゆるところでトニョに出会っていたが、ノブに夢中でそのことに気付かなかった。
「ビアガーデンに夜8時で大丈夫」というメモを書き、ノブの浮気を知らせたのもトニョである。トニョは自分が9歳の時に『拡張型心筋症』だと知り、いつ死ぬか分からないという状況を受け入れ生きてきた。しかし、その前にレアに会いたいと強く願ったのだ。
トニョの長い手紙を読み、レアは涙を流した。トニョは「君は目が見える時僕が見えず、目が見えないと僕が見えた」とも言った。
レアはトニョと訪ねたあらゆる思い出の場所に1人で行き、そこでわざと目隠しをした。少しでも、トニョを思い出すために。
「キタキタ」感想・評価・考察【トニョの手紙に感動する】
本作品は2017年にフィリピンで公開された、ラブコメディ映画です。日本では、大阪アジア映画祭で上映されました。
日本の札幌を舞台にしたこの映画では、在日フィリピン人の恋愛が描かれています。
『キタキタ』という映画タイトルからはやや不思議な印象を受けますが、タガログ語でキタには「私達」や「見える」という意味。
劇中でのトニョの手紙のセリフ、「君は目が見える時に僕が見えず、目が見えないと僕が見えた」には、ハッとさせられることでしょう。
レアはトニョに何度もキャベツを届け出会っていたのに、彼があのホームレスだと気付かないままでした。またトニョがキャベツの話をしても、気付きません。当時のレアの関心事はノブとの結婚であり、トニョの存在は無いに等しかったのです。
ストーリーは時間軸を入れ替えるなど凝った構成になっていますが、物語がシンプルなので難解ではありません。むしろ、エモーショナルな物語に集中できる作品です。
またこの類の恋愛映画の着地はおそらくこうであろう、という予想も見事に裏切られます。特にレアが視覚を取り戻したその直後に、トニョが亡くなるという展開は、ショッキングであると同時に斬新でもありました。
その後も、物語はどんどん思わぬ方向に進んでいきます。
しかしこの映画は、俳優らの演技力のおかげもあり全体的にはコメディタッチの優しい映画に仕上がっています。展望台で「幸せの鐘」を鳴らす場面など、ロマンティックなシーンも満載です。